たとえば4月、真夜中に。

feelin blue & tie with 'goodnight my darling'

name & me

name & me

name : 比米子(ひめこ)

me : 戸籍名が比米子。





陰陽師で名前は一番短い呪詛だというセリフがあって、最近おやすみを言われるたびに思い出す。ずっと自分の名前が嫌いだった。



「比べる米の子」



説明もしたくなかったと思えないくらい呪われていた。自分の名前に縛り付けられていた。

名前は呪詛だ。人を縛り付ける。「比べる米の子」、あまんじて受け入れるか、あくまでも「ひめこ」でいることを選ぶか。

一度は家裁で改名の手続きをすることも視野にいれたけれど、止めた人がいた。




「漢字なんて人が作った記号でしかない」




声に出された私の名前は、空気を裂いた音にしかならないことを忘れていた。言葉は音で心の中を鳴らしているだけなのに、私はいつも自分の名前に込めた願いを忘れて自分を縛り付けていた。

喜ばしい日に私を祝福した祝詞が私を縛り続け、突然その呪詛が祝詞に変わる。



きっと一人に戻るとまた、声を失った漢字の欠けた私の一部は呪詛になる。